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 創薬の基本と概念



◇創薬の歴史:構造-活性相関から「並列創薬」へ 
 1.構造-活性相関(QSAR)とセレンディピテイ
 2.インシリコ創薬の歴史と時代的な変化

 3.「早期ADME-Tox」を超えた21世紀の創薬、「並列創薬」の展開
 4.「並列創薬」の展開と差別化および負けない創薬へのチャレンジ

   ・予測モデルは購入してもよいが、独自に構築して育てることで企業の
    財産/武器とし、他社との区別化や競争力強化の武器とする。



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◇創薬の基本と概念
 創薬の基本と概念について(本論)

 構造-活性相関(QSAR)とセレンディピテイ(Serendipity:偶然の幸運)
 構造-活性相関(QSAR)を行っていると、たとえ素晴らしい結果を出したとしても、殆どの場合「後付け」と言われることが多かった。これは、初期に行われた構造-活性相関は実験後のデータ整理的イメージが強く、学会やJournal発表のための手段とされることが多かったためである。残念であるがこの現状は、構造-活性相関の技術が様々な点で高度なものとなった現在でもあまり大きな変化はありません。
 構造-活性相関により、研究者が想像もしなかった全く新しいメカニズムが発見され、そのメカニズムに従って新しく独創的な薬が設計されて成功すればこのイメージも変わると思いますが、このような事例は殆どないのが現状です。しかし、ごく少数の卓越した研究者のセレンディピテイに依存した創薬よりは構造-活性相関による創薬が優れていると考えます。たとえ構造-活性相関が「後付け」と言われても、研究においてデータ整理は必須であり基本です。また、構造-活性相関で失敗することがあっても、そこから学んで次の展開に結びつけることが出来ます。セレンディピテイは多くの研究者に驚きと感銘を与えますが、そこから学べることは少ないし、一回限りの出来ごとにしかすぎません。従いまして私は、多くの研究者にとり学び成長することの出来る構造-活性相関の方が実り多い手法であり、継続して行うべきものと信じまております。

 インシリコ創薬の歴史と時代的な変化
 創薬を支える多種多様な研究開発業務中、構造-活性相関(QSAR)あるいはドラグデザインと称されるアプローチとして現在は様々な手法が存在する。歴史的にみると、最初に構造-活性相関(QSAR:Quantitative-Structure Activity Relationships:定量的構造-活性相関)手法として認識されたのは1964年に発表されたHansch-Fujita法が最初です。その後、X線結晶解析とディスプレイ技術の進歩に伴いドッキング手法が展開され、いわゆるドラグデザインという言葉が使われだし、その全盛期を迎えました。
 続いて、WET実験の分野で大きな進歩が起こりました。化合物合成の分野ではコンビナトリアルケミストリーが展開され多数化合物の短期/同時合成が可能となり、さらにスクリーニングの分野ではHTS(High Throughput Screening)の技術が開発され、従来のスクリーニングとは比較にならない数のスクリーニングが可能となりました。これらの実験技術の進歩(主として高速化と多数処理)に伴い、要因解析やデザインが中心であった構造-活性相関やドッキング等のコンピュータを用いた創薬研究(CADD : Computer Assisted Drug Design)分野も多数化合物の高速処理への要求が強まってきました。この要求に従って、要因解析やデザイン中心の構造-活性相関やドッキングは高速/多数処理を目指したスクリーニングを中心に急速に発展します。なお、このころから始まったバイオテクノロジー研究分野で、コンピュータの事をインシリコと称することが多くなり、この言葉が創薬関連研究分野で一般的となり、コンピュータの代わりにインシリコという言葉が使われるようになりました。先のCADDと言う言葉も昨今の研究現場では、「インシリコ創薬」と言うのが一般的となりました。
 創薬研究におけるもうひとつの大きな流れは、創薬におけるADME-Tの果たす役割の重要性が認識され、創薬過程にこのADME-Toxの評価を積極的に盛り込むことが重視されるようになった事です。この概念は「早期ADME-Tox」という言葉で表現され、創薬の早い段階でADME-Toxの評価も考慮することを指しています。しかし、薬理活性を中心に最適化されてきた構造-活性相関やドッキング等のインシリコ創薬技術の殆どは、その適用原理上このADME-Toxへの適用はできません。従って、ADME評価技術自体は、元々ADME研究分野で伝統的に展開されてきたPKやPDを基本として展開されております。この結果、構造-活性相関やドッキングと互いに独立して展開されており、この点では昔と手法的に大きな差異はありません。
 「薬理活性が無ければ薬ではない」と言われるように、単に「薬」として考える場合は従来行なわれてきたような、最初に薬理活性ヲ決めて次にADME、毒性と順番に最適化する「逐次創薬」で十分です。しかし、より大きな観点である「創薬」という観点で考えた場合、薬理活性のみならずADME、毒性、物性も加えた総合的、且つ高次元から考察する開発が今後の創薬現場では重要となります。現時点で、この薬(化合物)が有する全特性を基本原理上総て扱うことの可能な手法が「化学多変量解析/パターン認識によるアプローチ」です。従って、薬(化合物)の種々特性を総合的に考察しながら創薬を行う「並列創薬」の実施にはこの化学多変量解析/パターン認識技術は不可欠です。
 創薬研究分野でこの化学多変量解析/パターン認識技術を展開してきた研究者が少ないこともあり、現在は本研究分野に対する創薬関連研究者からの認知度が低く、実績も少ない(ケモメトリックスという分野で考えれば研究者数は多くなるが、この研究自体は創薬との関連性が薄い)のですが、創薬の流れは今後確実に「化合物全特性の同時/総合評価」へと変化します。この技術は21世紀の創薬研究分野における最も重要な基本技術となります。また、創薬以外の様々な分野へもその適用範囲を急速に拡大するものと考えております。

 株式会社インシリコデータは、この「化学多変量解析/パターン認識」による21世紀の創薬技術である「並列インシリコスクリーニング」「並列インシリコ創薬」に関する総合的な支援コンサルタントを行います。

 「早期ADME-T」を超えた21世紀の創薬手法、「並列創薬」の展開
 創薬におけるADME考慮の重要性が認識されたことにより、それまでは単なる薬理活性発現化合物のチエックの役割にしか過ぎなかったADME評価が、創薬スキームの中に積極的に取り入れられるようになりました。当初ADMEのみであったが、その後まもなく毒性(安全性)も含めたADME-Toxへと発展し、さらに当然の流れではあるが、物性も加えたADME-Tox-Pとなっています。
 もともと、化合物の「一元多項(元は一つだが、複数の側面を持つ:化合物名も一つの化合物が複数の名前を持つので一元多項である)」性から考えれば、「並列創薬」のように、化合物が有する薬理活性、ADME、毒性、物性という全ての特性を創薬初期の過程で同時且つ総合的に考察することが理想です。しかし、技術的な限界から高速同時評価は実現不可能であったため、次善の策として「逐次創薬」手法が取られ、創薬が始まった当初から現在まで無条件で引き継がれてきました。この次善の策である「逐次創薬」が手戻りの発生等により創薬の能率を大きく低下させていることは明白でしたが、技術の壁が前面に立ち塞がっており、これを打破することは出来ませんでした。この壁がコンピュータパワーの向上により打ち壊され、つい最近までは夢にしか過ぎなかった「並列創薬」は実際に実現可能なレベルまで到達しつつある。程なく、21世紀の創薬の一般的なスタイルになると考えます。

 「並列創薬」の展開と差別化および負けない創薬への導入
 「並列創薬」を組み込むことで、従来のアプローチと比較して高いヒット率を達成出来ることは、「並列創薬」のところで述べた逐次創薬と並列創薬との比較シミュレーションからも示されます。これだけでも、従来の創薬手法と比較して相当な効果が出るはずです。今後「並列創薬」が普及する前に一瞬でも早くこの手法を適用することが、他社に先駆けて一歩抜け出すためのチャンスでもあり、新たなステップとなることは明らかです。一旦、「並列創薬」が普及し始めれば、多くの会社が「並列創薬」を行なうことになります。このような状況下に取るべき次の手段としては、同じ土俵にあったとしても、他社との差別化や追随を許さないようにすることが重要です。
 「並列創薬」の本質は予測にあります。従って、他社よりも多い予測項目数、他社が持っていない予測項目、他社の予測モデルよりも予測精度の高い予測モデル(式)をそろえることで他社よりも優位に立つことが可能となります。従って、「並列創薬」では予測モデル自体が他社との競争力を優勢に保つための武器であり、予測モデルそのものが、開発競争に打ち勝つための財産となります。従って一瞬でも早く、今後の展開を見込んで会社独自の予測モデルの構築を目指したデータ収集が大事です。この場合、次に展開する予測モデル構築を意識して行うデータ収集と、単にデータを集めて単なる記録と実績作りだけのデータ収集では、次に行う作業、即ち集積されたデータを用いて予測モデルを構築する場合に天と地ほどの差異が出来てしまいます。即ち、データ収集自体は無目的で保存するのではなく、独自の予測モデルを構築する時に必要なデータ様式を意識しながらデータを集めることが必要です。目的意識のない、単なる実績を残すだけのデータ収集ではイザという時に利用できませんし、単なるゴミ情報の山となるだけです。
・予測モデルは購入してもよいが、独自に構築して育てることで企業の財産/武器とする。
 一般的に予測モデル自体は販売されており、この予測モデルを購入することは可能です。しかし、このような予測モデルは他社でも購入できるし、企業の体力の差が反映されるだけと考えます。予測モデルの特性上、会社内部のサンプルを用いて予測モデルを独自に構築すると、その予測モデルの予測精度は確実に向上します。これは、個々の会社が扱う、得意とする化合物を基本として予測モデル(即ち、カスタマイズされた予測モデル)が独自に形成されるためです。市販の予測モデルは汎用的なサンプル化合物を用いて構築されるので、一般的に汎用性が高くなっています。従って、過去に扱った化合物とは異なる全く新しい化合物をターゲットとして創薬を行う場合は市販のモデルを用いる方が良いと考えます。また、この場合は予測モデルの購入当日から予測出来るので、モデル構築の手間や時間がかからず、時間を買うという観点の時は有効です。しかし、このようなことがなく、自社が得意(財産)とする化合物群への適用中心であるならば、独自の予測モデルを構築することがベストな結果(予測精度の高い予測モデルの構築)が得られます。また、この独自の予測モデル自体が他社との差別化や参入障壁となり、会社の未来に引き継ぐ財産となります。すなわち、自社データを単に保存してディスクの肥やしとして眠らせるのではでなく、有形で役に立つ財産とすることが可能です。
 株式会社インシリコデータは、この「予測モデル構築」に関する総合的な支援コンサルタントを行います。


 創薬の基本と概念について


1.創薬研究における要因解析重視のアプローチと、予測(スクリーニング)重視によるアプローチ
2.発見型アプローチと仮説検証型アプローチ
3.種々創薬アプローチの薬理活性、ADME、毒性、物性への適用限界について



創薬研究における要因解析重視のアプローチと、予測(スクリーニング)重視によるアプローチ

・要因解析重視のアプローチ
 事象の因果/相関関係の追及を重視するアプローチで、議論がしやすく、まとめやすいこともあり、研究目的や発表重視の意味合いが強い場合は本アプローチが取られる。
 このアプローチの場合は、分類/予測率の高さは目安程度でさほど重視されない。むしろ、個々の事象に対してリーゾナブル、あるいは明確な説明が出来ることが重視され、多くの場合「仮説検証スタイル」のアプローチが取られる。この場合、テーマの絞り込み、サンプリングの良さと洞察力が研究の成否を決める。

・予測(スクリーニング)重視のアプローチ
 予測によりスクリーニングを行うことを目指すアプローチ。
研究目的というよりは、結果が求められる創薬の意識が強い場合に取られるアプローチである。
 昔からの創薬研究者には本アプローチは工学的なイメージが強く、原因/結果の議論がしにくいため、このアプローチを好まない傾向がある。しかし、原因と結果との因果関係が明確にならない中で実用に耐える高い分類/予測率を出すことは、また別の意味で極めて難しい問題である。この問題の解決には研究者の卓越した経験と、スクリーニング手法の特徴に関する洞察が求められる。
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発見型アプローチと仮説検証型アプローチ

発見型アプローチ
既知の要因を検証し、同時に新たな要因を発見することを中心に実施されるアプローチ

仮説検証型アプローチ
予め何らかの仮説を設定し、その仮説に従ってデータ解析等を行い、良好な結果が得られればその仮説が正しいとして結論付けるアプローチ
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種々創薬アプローチの薬理活性、ADME、毒性、物性への適用限界について

薬理活性、ADME、毒性、物性の特徴
 一般的に薬理活性はその作用メカニズムが比較的シンプルできれいであり、複雑な相互関係を有することは殆どない。また、多くの場合はメカニズムが明確になり、その結果ターゲットたんぱく等が固定されて創薬ステップに乗っていることが多い。これに対してADME、特に毒性はメカニズムが不明かつ複雑なことが多い。また、予測という観点でみた場合、ADMEや毒性は予測対象とすべき化合物の構造変化性(多様性)が極めて高いという特徴がある。即ち、メタン、エタンレベルから、テルペン、ステロイド、マクロライド、糖等の基本構造や分子量まで大きく異なる化合物を対象とした予測が求められる。
 現在適用されている構造-活性相関(QSAR)やドッキング手法では、要因解析を行う都合上このような構造変化性の極めて高い化合物群を対象にした予測は基本原理から実施不可能である。即ち、ADME、毒性、物性の予測は不可能ではないが原理上困難、且つ危険である。

創薬手法と薬理活性、ADME、毒性、物性への適用限界
 個々の創薬手法は手法単位で適用範囲と限界があり、全ての化合物に適用出来るわけではない。これは手法の基本概念、実施定義、原理に起因する問題であり、全ての手法が有する問題である。利用者はこの適用範囲と限界を常に意識しつつ利用することが必要である。これを、知らずに何でもかんでも適用すると、解析が失敗するし、一見成功と思われても、適用外適用をおこなっているので、さらなる解析等で傷口を拡大してしまう。
 現在までの多くの構造-活性相関(QSAR)やドッキング手法は目標を薬理活性に絞り、要因解析力を強化するべく、基本原理からして化合物の構造を絞ってきたという現実がある。例えば、代表的な構造-活性相関(QSAR)手法であるHansch-Fujita法が対象と出来る化合物群は基本骨格が固定され、且つ置換位置も限定された化合物しか適用可能とならない。その代り、この適用基準を守ればその要因解析力は極めて高い。また、ドッキング手法はレセプターサイトでの化合物フィッテイングが問題となるので、レセプターが不明なものは勿論(このような場合、一般的にはリガンドベースドドッキングが適用される)のこと、レセプターサイズを超えた化合物や、サイズが小さい化合物等は適用外である。
 以上のように、創薬手法はそれぞれ手法としての長所/欠点/適用限界を持つので、これらを理解した適用が必要である。現時点で、薬理活性のみならず、ADME、毒性そして物性をも含めた全特性への適用が可能で、且つ化合物構造変化性に殆ど影響されない手法は「化学多変量解析/パターン認識」であることをご理解いただきたい。



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 創薬関連資料

QSAR手法概論
1.Hansch-Fujita法
2 . Free-Wilson 法
3. C oMFA 法(3D-QSAR)
4. SARDE 法(湯田による3D-QSAR)
5. A I(人工知能) による手法
6. パターン認識法
7 . LEAD RECONSTRUCTI0N (リード化合物再構築)法
8 . LEAD RETRIEVAL (リード化合物検索)法
9. 3 次元化合物検索
1 0 .ドラ グ レセプタ一理論によるアプローチ
 ・レセプターマッピング
 ・レセプターフィッティング
 ・リガンドベースドドッキング
1 1. 類似度算出によるアプローチ

*インシリコ創薬関連資料:
 過去に湯田がまとめたインシリコ創薬関連資料です。
Compendium of QSAR methods by yuta

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